
クレーン作業に欠かせない「玉掛け」について、どの程度理解していますか?多くの人が、玉掛け作業や必要な資格に関して混乱しやすいです。本記事では、玉掛け作業の基礎知識や手順、必要な資格などについて解説します。
玉掛け作業は、クレーン作業の中でも特に重要で、適切な知識とスキルが不可欠です。玉掛け作業への理解を深め、安全かつ効率的な作業の参考にしてください。
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玉掛けとはクレーンのフックに荷掛け・荷外しする作業

玉掛けとは、クレーンを使って荷物を吊り上げる作業のことです。主に建設現場や工場で行われ、安全性が非常に重要です。玉掛け作業者は、クレーンオペレーターと連携し、事故防止に努めます。
正確で安全な作業をするためには、特定の技能と知識が欠かせません。玉掛け作業では、荷物を安全かつ効率的に移動できます。単なる荷物の移動ではなく、高度な技術と安全意識が必要な作業です。玉掛けの定義と重要性、玉掛け作業者の主な就職先について理解を深めましょう。
玉掛けの定義と重要性
玉掛けは、重量物や大型荷物をクレーンで吊り上げる作業です。荷物の形状や重心を考慮し、適切な位置にフックを掛けることが、安全なクレーン作業の鍵となります。不適切な玉掛けは、重大な事故の原因になります。
玉掛け作業者が誤った位置にフックを掛けると、バランスを崩して荷物が落下します。周囲の人の危険を回避するためにも、玉掛け作業者には専門的な知識と技術が必要です。安全に作業すれば、無駄な時間やトラブルを避けられます。玉掛けは、安全性と効率性を確保するうえで欠かせない作業です。
玉掛け作業者の主な就職先
玉掛け作業者は、建設現場や製造業の工場などの重い荷物を扱う場所で需要があります。具体的な就職先は、以下のとおりです。
- 建設現場
- 製造業の工場
- 物流センター
- 鉄鋼業や造船所
- 倉庫業やプラント施設、港湾施設
- 重機リース会社や解体業
玉掛け作業者は、作業の安全と効率を支える重要な役割を担います。
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玉掛け作業の具体的な手順

玉掛け作業の具体的な手順について、詳しく解説します。
吊り荷にワイヤーロープを掛ける
吊り荷にワイヤーロープを掛けるに際は、ワイヤーロープを適切な長さに切りましょう。ワイヤーロープの端部の処理が不十分だと、ロープがほつれたり、強度が落ちたりするリスクがあります。吊り荷の重心を確認し、重心に近い位置にワイヤーロープを掛けてください。
ワイヤーロープは定期的に摩耗や劣化を確認し、異常があれば交換します。緩みある場合には、再調整しましょう。複数のロープでバランスを取ると、安全に吊り荷にワイヤーロープを掛けられます。安全性を確保するために、細心の注意を払いましょう。
クレーンオペレーターを呼ぶ
クレーンオペレーターに連絡を取る際は、具体的な作業内容や吊り荷の情報をしっかりと伝えてください。現場の状況を正確に伝えると、適切に準備ができ、安全に作業を進められます。クレーンオペレーターが現場に到着するまで待つ間に、クレーンの位置を確認し、安全な場所に移動しておきましょう。
クレーンオペレーターが到着したら、吊り荷の問題がないかをチェックします。クレーンオペレーターが準備完了の合図を出す前に、周囲の安全を再確認してください。準備完了の合図が出たら、吊り上げ作業を始めます。安全なクレーン作業には、適切な連携と確認作業が欠かせません。
フックに荷物を吊り下げて安全確認する

フックに荷物を吊り下げたら、吊り荷の安定性と安全性を確保します。以下のポイントを確認してください。
- フックの中心に荷物が位置しているか
- 荷物がフックにしっかりと掛かっているか
- ワイヤーロープやチェーンの緩みやねじれがないか
- 荷物のバランスが偏っていないか
- 周囲に障害物や人がいないか
荷物が中心からずれると、バランスを崩して落下する危険があります。荷物がしっかりかかっていないと、持ち上げた際に外れてしまいます。緩みやねじれは、吊り荷の安定性を低下しさせる原因です。バランスが取れていないと荷物が傾きやすくなり、安全に運べません。周囲の障害物や人がいないかの確認も重要です。
クレーンを持ち上げる合図をする
クレーンを持ち上げる際は、明確で一貫性のある合図が必要です。クレーンオペレーターに対して手信号または無線を用いて合図します。手信号の基本的な種類は「上げ」「下げ」「停止」です。作業エリア全体が見渡せる位置から行うと、クレーンオペレーターが視認しやすく、誤解を防げます。
合図を送る前に、他の作業員に合図の意味を周知しましょう。定期的にクレーンオペレーターと合図の練習をすると、精度を高められます。緊急時には速やかに「停止」の合図を送ってください。「停止」の合図は、両腕を交差させるなどの目立つ動作が一般的です。
介錯ロープで誘導する

介錯ロープは、吊り荷の安定を保つために使用されます。クレーン操作時の吊り荷の揺れや振れの抑制が可能です。長尺物や大型の荷物を運搬する際には、特に役立ちます。長尺物や大型の荷物は重心が不安定なため、揺れや振れが発生しやすいです。
介錯ロープを正しく使用すると、荷物をスムーズかつ安全に運搬できます。作業者は常にクレーンオペレーターと連携しながら、介錯ロープを使用しましょう。クレーンオペレーターとしっかりとコミュニケーションを取ると、吊り荷を安全に移動でき、事故を未然に防げます。
吊り荷を下ろして荷解きする
吊り荷を下ろして荷解きする際は、慎重さが必要です。吊り荷をゆっくりと地面や指定の場所に下ろし、吊り荷のバランスを崩さないように注意してください。周囲の人や物に影響を与えないために、安全を確認します。周囲に障害物がないのを確認し、安全な場所に下ろしましょう。
吊り荷が安定した状態で荷解きすると、作業の安全性の確保が可能です。使用した吊り具を点検し、次の使用に備えて整備します。荷解き作業中に発生した異常や問題は速やかに報告し、吊り具を元の場所に戻しましょう。
玉掛け作業に必要な資格

玉掛け作業には、「玉掛け特別教育」と「玉掛け技能講習」の2種類の資格が必要です。特別教育は比較的短期間で取得可能ですが、技能講習はより高度な知識と技術が求められます。資格を取得することで、就職先の選択肢が広がります。
玉掛け特別教育(1トン未満)
玉掛け特別教育(1トン未満)は、1トン未満の荷物を扱うために必要な資格で、6時間以上の講習が義務付けられています。内容は、学科4時間以上、実技2時間以上です。
学科講習では、玉掛けに関する基礎知識や吊り荷の中心の確認方法、作業手順と安全確認などについて学びます。実技講習の内容は、ワイヤーロープの取り扱いやクレーンのフックへの荷掛け・荷外し作業の実践、安全確認の手順などです。理論と実技の両面でしっかりとした知識と技術が身につきます。
受講費用は講習機関によって異なりますが、1万円前後が目安です。修了後には修了証明書が発行されます。資格があると、建設現場や工場、倉庫などで1トン未満の荷物の移動作業が可能です。資格に期限はありませんが、定期的な再教育や講習の受講が推奨されています。
» 東京技能講習協会・玉掛け特別教育(外部サイト)
玉掛け技能講習(1トン以上)

玉掛け技能講習(1トン以上)は、荷重が1トン以上の玉掛け作業を行うために必要です。厚生労働省が定める公的な資格であり、安全管理や法令に基づく知識を習得できます。玉掛け技能講習(1トン以上)の具体的な内容は、以下のとおりです。
- 受講対象者:18歳以上
- 講習内容:学科と実技
- 学科:計24時間(基本知識、法令、安全管理)
- 実技:計16時間(荷掛け、荷外し、合図の方法)
- 講習費用:3〜5万円
- 講習機関:専門学校や認定機関
資格の有効期限はないので、一度取得すれば更新の必要はありません。合格すると、即日で資格証明書が発行されます。
» 労働技術講習協会・玉掛け技能講習(外部サイト)
資格取得の流れと難易度
資格取得は、指定された講習機関への申し込みから始まります。学科と実技に分かれた講習内容が用意されています。講習は2〜3日間で完了し、修了試験に合格すると資格取得が可能です。
資格取得の難易度は比較的低く、基本的な学習と実技練習を行えば合格できます。安全性の確保のためには、しっかりとした理解と技術が必要です。
玉掛け作業にあると便利な資格・知識

玉掛け作業では、以下の資格があると役立ちます。
- クレーン運転士資格
- フォークリフト運転技能講習
クレーン運転士資格
クレーン運転士資格は、クレーン操作に必要な国家資格で、学科試験と実技試験に合格する必要があります。学科では法令や安全管理、実技ではクレーン操作技術が評価されます。
受験資格は18歳以上です。クレーンの種類(移動式や床上操作式、デリックなど)によって必要な資格が異なります。資格取得後も定期的な更新や安全教育が欠かせません。資格を持つと、建設現場や工場、港湾などでの就職や転職で有利です。
フォークリフト運転技能講習
フォークリフト運転技能講習は、特別教育と技能講習の2種類があります。1トン以上のフォークリフトを運転するためには、技能講習を修了する必要があります。技能講習は学科と実技で構成され、学科講習は約11時間、実技講習は約20時間が一般的です。18歳以上が受講できます。
講習内容はフォークリフトの基本操作や運転の基本、安全作業などです。講習修了後には実技試験と筆記試験があり、合格すると修了証が発行されます。修了証は全国で通用し、取得後も定期的な安全講習や訓練が大切です。企業によっては、講習費用を全額負担する場合もあります。
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玉掛け作業の安全対策と注意点

玉掛け作業では事故が起こりやすいため、安全対策が重要です。玉掛け作業中によくある事故と防止策や安全装備の重要性、定期的な安全指導の必要性について理解しましょう。
玉掛け作業中によくある事故と防止策
玉掛け作業中によくある事故は、以下のとおりです。
- 吊り具の破損による荷落下事故
- 重量計算不足による過積載事故
- 作業エリアでの人身接触事故
- 吊り荷のバランス不良による荷落下事故
- 振動や揺れによる落下事故
吊り具の破損による荷落下事故は、点検不足や経年劣化が原因で起こります。過積載事故を防ぐためには、吊り具の耐荷重の確認が重要です。作業エリアを区分けして安全区域を設定し、人身接触事故を防ぎます。吊り荷の重心の確認と動中の振動や揺れの抑制も欠かせません。介錯ロープを使用して吊り荷を安定させましょう。
安全装備の重要性

安全装備が整っていると、事故やけがのリスクを大幅に減少できます。ヘルメットは頭部を保護し、落下物から守ります。足をけがから守るには、安全靴は履きましょう。作業服は体全体を保護し、やけどや切り傷を防ぎます。安全装備がなければ、事故が発生した際に重大なけがを負う可能性が高いです。
定期的な安全指導の必要性
定期的な安全指導は、労働者の安全意識を高め、事故を未然に防ぎます。リスクと対策をしっかりと理解し、新しい知識の習得や更新を心がけましょう。一貫した安全行動の実践も重要です。
法的規制や標準を遵守するためにも、定期的な安全指導が欠かせません。法律を守るだけでなく、実際の作業現場での安全を確保するための具体的な対策を徹底しましょう。
玉掛け作業に向いている人

玉掛け作業に向いている人は、以下のような人です。
- 注意深く作業できる人
- チームワークを大事にする人
玉掛け作業は安全が最優先ですが、細かい部分にも気を配る必要があります。
注意深く作業できる人
注意深く作業できる人には、以下のような特徴があります。
- 慎重で集中力が高い
- 見逃しが少ない
集中力が高い人は、複雑な作業や長時間の作業でもミスを犯しにくいです。細部まで注意を払い、事故を未然に防ぎましょう。荷物を吊り上げる際は、フックの掛かり具合を慎重に確認してください。見逃しが少ない人は、小さな異常や不具合も見逃さず、早期に対応できます。
チームワークを大事にする人
玉掛け作業は、複数の人で連携する場合が多く、協力が不可欠です。クレーンオペレーターや他の現場作業員と円滑にコミュニケーションを取ると、作業の効率と安全性が大きく向上します。メンバーが自分の役割をしっかりと理解し、互いに信頼し合うことが大切です。
コミュニケーション能力が高く、他人の意見やアイデアを尊重できる人は重宝されます。任された仕事をこなし、チームの目標達成への意識が高いと、他のメンバーの信頼を得やすいです。他人の成功や失敗を共に喜び、共に反省する姿勢も、組織の一体感を高める要素です。
まとめ

玉掛けは、クレーンを使った荷物の吊り上げ作業で、建設業や製造業で幅広く活躍できます。作業には資格が必要で、1トン未満は特別教育、1トン以上は技能講習が必須です。
クレーン運転士やフォークリフト運転の知識も作業に役立ち、安全対策としては事故防止策や安全装備、定期的な指導が重要です。玉掛け作業には、注意深く安全を守り、チームワークを大切にできる人が向いています。